共同親権?単独親権?|参院選 各党の公約・活動まとめ

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離婚をしたら、親権は、片方の親が単独でもつべきか?両親が共同で持つべきか?

日本の現行法は「単独親権」としていますが、近年は「共同親権」にすべきという動きが活発になっています。

現行の単独親権の問題としては、主に親子断絶の問題があげられています。
親権を持たない別居親が、子供に会いたくて面会を希望しても、親権を持つ同居親に断られて、何年もの間、面会することができない問題を指摘しています。

一方、共同親権の問題としては、主にDV家庭の問題があげられています。
DV被害者がDV加害者との交流を続けなければならなくなる危険性を指摘しています。

民法がうたう「子供の利益」のためには、「共同親権」と「単独親権」どちらの制度がよいのか?

7/10の参院選の投票日目前、
直近で共同親権問題を取り上げた報道や、
各党の公約・活動を整理します。

共同親権?単独親権? テレビ報道でも議論が

6月26日、フジテレビ系『日曜報道 THE PRIME』(日曜午前7時30分)で、「離婚後の共同親権」の是非について議論されました。

有識者として、
・ジャーナリストの櫻井よしこさん
・弁護士の本田正男さん
・タレントで羽衣国際大学現代社会学部教授のにしゃんたさん
・共同養育、面会交流をサポートする一般社団法人りむすび代表のしばはし聡子さん
の4名が、「離婚後の共同親権」の是非について議論しました。

共同親権を導入すべきか? DVのケースはどうする?

櫻井よしこさん


 父母がともに子供の成長を見届けることが大事と主張し、共同親権であるべきとしました。

子どもの幸せ、健全な養育、成長を考えると絶対に共同親権にしなければいけない。片方の親が性犯罪をしたとか、DVをしているとか、どうしても許せない状況がある場合は、もう片方の親に任せるという意味の単独親権があっていいとは思う。けれども、法体系としては共同親権を基本とするところに軸足を置かないと

https://news.yahoo.co.jp/articles/547d6ed9279b8d2a9d96c13cc292a6876720a059

 また、現行法では、虚偽DVにより親が子供に会えなくなるという問題もあげました。

やった記憶はないのにDV夫だと言われ、子どもを連れさられて、離婚になり、親権を取られて、十何年も子どもに会えていないケースもある。
DVをされたという申告だけで日本ではDV夫、DV妻だ。DVは絶対許してはならないことは確かだが、DVが本当にあったかについて客観的な第三者が調査する仕組みを確立していかなければフェアではない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/547d6ed9279b8d2a9d96c13cc292a6876720a059

本田正男さん

 DVの問題や裁判所のインフラの脆弱さなどをあげ、共同親権は慎重に検討すべきとしました。

家族の形は様々で共同親権になったらこうなるというように、簡単に答えが出るわけではない。
裁判所のインフラが非常に脆弱。日本の裁判所は米国のように非常に細かく丁寧にみることはできない。
もう少し子どもの意向が汲めるような状態を出さなければいけない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/547d6ed9279b8d2a9d96c13cc292a6876720a059

 DVについて、ご自身の依頼者の例をあげ、精神的ダメージへの考慮を要望しました。

もちろん殴るなどは論外だが、精神的な部分は目に見えない。目に見えないとしても、言葉でさまざまなトラウマを抱えている人はいっぱいいる。私の依頼者の中で40歳になっても50歳になっても親子関係の葛藤に苦しんでる人は大勢いる。精神的なダメージを与えるような有害な状況が家庭の中にあるというところを、もう少し幅広く見てもらいたい。

https://news.yahoo.co.jp/articles/547d6ed9279b8d2a9d96c13cc292a6876720a059

にしゃんたさん

 「三方良し」の精神をベースに、共同親権であるべきとしました。

現状は「三方良し」になっていない。
親権を持つ片親だけが喜び、往々にして子どもと親権のない親が泣き寝入りしている。
両親良し、子ども良し」、あるいは、「子ども良し、親も良し、社会も良し」までもっていく必要がある。

https://news.yahoo.co.jp/articles/547d6ed9279b8d2a9d96c13cc292a6876720a059

しばはし聡子さん

 子供にとって「親は二人」という当たり前のことを浸透させる意味でも、共同親権と単独親権を選択できる制度を導入すべきと主張しつつも、その場合には逆に親権を巡って争う構造になることの懸念もあげました。

離婚しても子どもにとって親が二人であるというすごく当たり前のことを浸透させるという意味でも、共同親権が選択できる制度を導入するべきだ。ただ、両方選択できるというときに逆に親権を巡って争う構造になることが懸念される。実際、裁判所を通して離婚調停などを行っていくと別居前よりも関係が悪化する事例がよくある。

https://news.yahoo.co.jp/articles/547d6ed9279b8d2a9d96c13cc292a6876720a059

 そのうえで、親権の選択よりも、別居後にすぐに子供と会える制度を作ることが大事としました。

親権をどちらにするか選択することよりも、別居後にすぐに子どもと会える環境をまず制度として作ること。離婚後も共同養育できる関係性をつくっていくために、例えば裁判所にカウンセリングの制度を設けるなど、そういう環境をつくっていくことの方が大事だ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/547d6ed9279b8d2a9d96c13cc292a6876720a059


なお、この番組の視聴者投票では、
共同親権に
賛成…72%
反対…13%
どちらでもない…15%


という結果でした。

世論では共同親権賛成が圧倒的に多い状況です。

ただ、個人的には、
「反対の13%に込められた思いの濃度」
は、非常に高い気がしています。

いずれにせよ、多くの国民が親権問題について知り、考えるきっかけとなる非常に有意義な報道だったと感じました。

なお、7/3の「ワイドナショー」でも、離婚後の親権問題について取り上げられました。こちらの記事もあわせてご覧ください。

【ワイドナショー】共同親権に賛成する10代に大人の反対意見は⁉︎|全コメントまとめ
参院選が目前に迫る中、離婚後の親権を「共同親権」にすべきか、現行の「単独親権」を維持すべきかという問題について、報道で取り上げられる機会が増えてきています。7/3放送の「ワイドナショー」でも親権問題が取りあげられました。そこで、親権問題につ...

共同親権?単独親権?各党の公約、方針は?

各政党は共同親権派か単独親権派か、2022年7月1日時点で政党の公約、方針として明記されているものを確認しました。

また、「共同親権プロジェクト」という団体が、参院選に向けて各政党に共同親権に関するアンケートを実施していました。

各政党の公約への明記状況と、「共同親権プロジェクト」のアンケート結果の抜粋を、以下の表にまとめました。

【共同親権派?単独親権派?】政党別一覧

共同親権派日本維新の会
単独親権派幸福実現党
どちらでもない自民党
国民民主党
社会民主党
日本共産党
不明公明党
立憲民主党
れいわ新選組
参政党
N国党

共同親権派の公約・アンケート回答

日本維新の会

子どもの福祉・最善の利益の確保のため、主要先進国で法制化されている共同親権・共同養育については、 DV (家庭内暴力)被害者保護等、 DV に対する施策の推進や法整備を行いつつ、制度の構築を目指します。

「政策提言 維新八策 2022」より

単独親権派の公約・アンケート回答

幸福実現党

子供への暴力や虐待が理由で離婚となったケースは別として、原則、現行制度を維持しながら、子供の希望を聞いたうえで親権を回復する余地を残しておくのがよいかと思います。

共同親権プロジェクトアンケート結果抜粋 | https://election.joint-custody.org/

その他の公約・アンケート回答

自由民主党

子供を中心に様々な角度から丁寧に議論していく必要がある。

共同親権プロジェクトアンケート結果抜粋 | https://election.joint-custody.org/

国民民主党

それぞれの家庭環境が異なることから、ひとりひとりの人格・声を大切にし、最良の環境を整えるために、子どもの権利保障について多面的に検討する必要がある。

共同親権プロジェクトアンケート結果抜粋 | https://election.joint-custody.org/

社会民主党

「親権」という名称を含め、子どもの権利条約の視点から抜本的な改正が必要です。親の養育責任の明記も不可欠だと考えます。

共同親権プロジェクトアンケート結果抜粋 | https://election.joint-custody.org/

日本共産党

「離婚後共同親権」を拙速(せっそく)に導入するのではなく、子どもの権利擁護の立場から、戦前の明治民法下で戸主が家族を支配していた時代の名残である「親権」そのものを見直します。民法の「親権」にかんする規定を抜本改正し、子どもの権利を実現する親と社会の責任・責務という位置づけを明確にします。面会交流や養育費の支払い、DV問題などについては、民法改正を待つまでもなく早急な改善をすすめます。

離婚した父や母などと子の面会交流、養育費の分担のとりきめについては、2011年の民法改正で、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と努力義務としてもりこまれています。共同親権については、子どもの権利・利益を尊重し「親権」そのものを見直す民法改正をめざします。

「2022参議院選挙政策」より


その他の意見には、「親権」そのものの捉え方を見直す必要があるなど、共同親権、単独親権だけに限らない議論が必要という意見があがっています。

共同親権?単独親権?政党の具体的な活動は?

上記の公約、アンケートでは「どちらでもない」に分類された自民党ですが、6月21日、自民党の作業チームが、共同親権について主に以下の内容を法務大臣に提言をしました。

離婚した場合、原則として父親と母親が引き続き子どもに対し責務を果たすため、双方が親権を持つ「共同親権」の制度を導入すべき
離婚する場合、父親と母親が子どもの養育を適切に行うため「監護割合」や養育費などについて定める「共同養育計画」の作成など、必要な事項について一定の責務を課すべき
「共同親権」の制度の導入に伴い、父親と母親の一方がDV=ドメスティック・バイオレンスや児童虐待を働いているなど、原則どおりに適用すると不都合が生じ得るケースについて、安心・安全の観点から丁寧に対応する規律を設けるべき

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220621/k10013682181000.html

与党の自民党が共同親権を推進する動きを見せたことは、今後の法改正への影響が大きいと考えられます。

共同親権?単独親権?候補者はどちら派?

候補者が共同親権派か、単独親権派か。確認する方法はあるのでしょうか?

【共同親権派】
共同親権・共同養育を推進する超党派の「共同養育支援議員連盟」という団体があり、共同親権に向けて様々な活動をしています。

「共同養育支援議員連盟」に加盟している候補者は、共同親権派と言えるでしょう。

【単独親権派】
一方、単独親権を守るための団体については、ネット上で探したものの、確認できませんでした。
候補者のホームページに、親権問題まで載せている方は少ないと思われます。
どうしても知りたい場合は、直接問い合わせてみるのが一番早そうです。

まとめ

7月10日の参院選の投票日まであとわずかです。

民法がうたう「子供の利益」

各家庭によっていろいろな問題があります。

それぞれの事情があるなかで、
「子供の利益」を守るためには
「共同親権」と「単独親権」
どちらがよりよい制度なのか。

あるいは、選択制を採用するにしても、
どちらをベースとするのがよいのか。

今回の参院選では、
政党、候補者が「親権問題をどう考えているか」
について、比較検討の材料としていただければうれしいです。

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