2人だけの「離婚協議」がどうしてもまとまらない。
そんな時、次のステップとして出てくるのが「調停離婚」です。
しかし近年、裁判所の「調停」ではなく、民間の「ADR(裁判外紛争解決手続)」を利用して離婚する方が増えてきています。
そこで今回は、
「ADR」とはどんな制度なの?
「ADR」を利用するメリット・デメリットは?
「ADR」を行っている機関は?
について解説します。
ADR(裁判外紛争解決手続)とは?
協議離婚
↓ ↘
調停離婚 ← ADR
↓ ↙(※)
「裁判離婚」
(※)法務大臣認定機関のみ
「ADR」は、「Alternative Dispute Resolution(代替的紛争解決手続き)」の略です。
紛争の解決は通常裁判所が行うものですが、民間の事業者が、専門家の立ち合いのもとで紛争解決を行うものをADR(裁判外紛争解決手続)と言います。
ADRの離婚はスムーズ?調停離婚と比較したメリット・デメリット
では、どんな場合に「調停離婚」ではなく「ADR」を利用するとよいのでしょうか?
ここから、ADRのメリット・デメリットを解説します
ADRのメリット
ADRのメリットには、以下のようなものがあります。
「裁判所」「弁護士」大げさにせずに手続きできる
2人では協議がまとまらないけど、裁判所で手続きするのはどうも・・・
弁護士を雇ってまで争いたくないわ・・・
このように、2人だけでは協議がまとまらないけど、できれば穏便に解決したいと願う方は少なくありません。
「離婚自体には合意していて、条件面の折り合いを第三者に手伝ってほしい」
こんな方は「ADR」を利用するのに適しています。
スムーズな解決が期待できる
調停離婚に要する期間は「3か月~半年」が最も多いですが、ADRでは「3か月以内」で決着がつく場合が多く、スムーズな解決が期待できます。
土日祝日・平日夜間でも対応してもらえる
「調停」は平日の昼間しか開催されませんが、「ADR」の場合は土日祝日・平日夜間でも対応してもらえる機関があります。
仕事を休むことなく手続きを進めることができるのも、スムーズな解決につながっている要因です。
ADRのデメリット
一方、「ADR」のデメリット、注意しなければならない点には、以下のようなものがあります。
ADRの合意書では強制執行できない
離婚調停で合意した条件を取りまとめた「調停調書」には法的な効力があり、もし養育費や慰謝料などの支払いの約束を破ったときは、給与や預金を差し押さえることができます。
一方、ADRの合意書には法的な効力がありません。合意した条件の中に、養育費や慰謝料のような金銭的な条件がある場合は、別途公正証書化しておいた方が良いでしょう。
ADRが不成立だったとき、離婚訴訟に移行できない場合がある
「離婚裁判」は、原則的には裁判所の「調停」を経てからでないと申し立てることができません。
例外として、「法務大臣認証のADR機関」で「ADR」を行った場合は、「調停」を経ずに「裁判」を申し立てることができます。
ただし、法務大臣認証機関のADRを経た後でも、裁判官が「裁判」の前に「調停」した方がよいと判断した場合は、改めて「調停」をしなければならない可能性があります。
ADR認証機関ごとの違いはあるの?
「ADRのデメリット」で解説したとおり、ADRは法務大臣認証機関で行うのがよいでしょう。
では、法務大臣認証機関は、すべて条件が一緒なのでしょうか?
答えはNOです。
機関によって、主に以下の点で違いがあります。
取り扱う紛争の分野
認定機関の中でも、「子の監護に関する紛争」は取り扱わない機関や、「内縁関係の解消」についても取り扱う機関など、機関ごとの特色があります。
調整者
ADRに立ち会う手続き実施者「調停人、あっせん人」の特性は、機関ごとに異なります。
- 弁護士
- 裁判官経験者
- 家庭裁判所の調査官経験者
- 行政書士
- カウンセラー
など、機関ごとの特性に応じた調整者が選任されます。
手続き
手続きの流れやかかる費用も機関ごとに異なります。
一般的な手続きの流れは次のようなものになります。
- 「申立書」を提出
- 相手方に、ADRに応じるかどうかの意思確認
- 調整者を選任
- 第1回期日を決定、通知
- 調停人進行のもと話し合いを実施(2回目以降は「4」「5」繰り返し)
- 調停成立すれば「調停合意書」を作成
ちなみに、「一般社団法人りむすび」のADRでは、申立人や相手方へのカウンセリングも実施しています。
不要な争いを避けるために、心のケアもしてほしい方にはおすすめです。
費用
費用の種類、金額についても機関により様々ですが、共通する費用としては以下のものがあります。
- 申立手数料(初期費用 約3,000円~27,000円)
- 期日手数料(調停ごとにかかる費用 約3,600円~21,000円)
離婚ADRの認証機関は?
法務省のホームページに離婚を取り扱うADR認証機関が紹介されています。
下記URLをご覧ください。
協議離婚の再検討をしたい方へ
ここまで「ADR」について解説してきましたが、いかがでしょうか?
第3者を交えるのは大変そうだと思ったら、じっくり2人で話し合う、協議離婚を再検討するのも良いでしょう。
協議離婚のポイントは以下の記事でまとめていますので、参照ください。
まとめ
「ADR」は、以下のような方におススメの制度です。
【こんな方におすすめ】
・離婚自体にはお互い合意していて、条件面を穏便に取り決めたい
・裁判所や弁護士に頼むほど大げさにしたくない
・早期に解決したい
ただし、以下の点に注意してください。
【注意点】
・認証機関のADRでも、解決できなかったときに速やかに裁判に移行できない場合がある
・ADRの合意書には法的強制力がなく、別途公正証書化の検討が必要
ADRは比較的早く決着できるメリットがあります。
しかし、早期といっても数か月はかかります。
離婚手続きの間、あなたの心にはいろいろな感情が湧き出てくることでしょう。
- これまでの結婚生活で不満だったことや、後悔していること
- 協議をしている中で、相手に憤りを感じること、逆に感謝すること
- 離婚後の生活に不安を感じること、逆に楽しみに感じること
- やり直した方がいいのでは?と感じること
長い協議を乗り切るには、あなたの心のケアも大切です。
当サロンは、あなたの悩みや不安をお聞きし、気持ちの整理をお手伝いします。
個別具体的な法律相談に対応することはできませんが、マラソンの伴走者のように、あなたの横で一緒に考え、寄り添っていきたいと考えています。
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